撮影スタジオを紹介するとき、よく使われるのが「○㎡」という広さの表記。スタジオを運営している側としても、「やっぱり広いスタジオほど撮りやすいのでは?」と考えていました。
でも、本当に重要なのは面積なのでしょうか?そこでDOLLYのThreadsで、カメラマンのみなさんにこんな質問をしてみました。
狭いスタジオって、何が一番撮りにくいんでしょう? スタジオ側だと単純に「㎡が広いほど撮りやすい」と考えてしまうのですが、面積より「こっちの寸法の方が重要」みたいなものがありそう。実際、スタジオ選びでどこを見ていますか?
今回もたくさんの回答をいただきました。そして、かなり多くのカメラマンから共通して出てきた言葉があります。
「引き」と「天井高」です。
「何㎡あるか」より「どれだけ引けるか」
今回、特に多かったのが「引き」に関する回答でした。同じ30㎡のスタジオでも、正方形に近い30㎡と、縦方向に長い30㎡では撮影のしやすさが変わります。
なぜなら、被写体からカメラまでの距離によって、使えるレンズが変わるからです。狭くて十分な距離が取れないと、広角寄りのレンズを使わなければ全身が収まらない場合があります。一方、十分な引きがあれば、標準レンズや中望遠レンズまで選択肢が広がります。
「最低でも85mmで全身が入るくらい欲しい」「宣材撮影では標準から中望遠まで使えると撮れ高が良くなる」という具体的な声もありました。つまり、スタジオの「広さ」を見るとき、「床面積だけではなく、被写体からどこまでカメラを離せるのか」を見る必要がありそうです。

同じ面積なら「縦長」の方が撮りやすいことも
「全体として広くなくても、縦長なら標準レンズや中望遠レンズが使いやすい」という意見もありました。物件を見ると、つい「○㎡」という数字に目が行きます。しかし撮影スタジオの場合は、「面積 × 形」で考えた方がよさそうです。
横方向には広くても奥行きが短ければ、カメラを後ろへ下げられません。逆に全体の面積はそれほど大きくなくても、長辺方向に十分な距離があれば撮影の自由度が上がることがあります。カメラマンの言葉を借りれば、「広さというより長さ」ということなのかもしれません。
もうひとつ多かったのが「天井高」
「引き」と並んで圧倒的に多かったのが、天井の高さです。全身撮影では、天井が低いと画角の中に天井や背景紙の端、撮影機材などが入りやすくなります。ストロボを高い位置へ上げたり、被写体の上からトップライトを入れたりするときにも高さが必要です。
つまり天井高は、「構図だけではなく、ライティングの自由度にも関係する」ということです。「天井高3m以上は欲しい」という具体的な意見もありました。

天井高の数字だけでは分からない。「梁」も重要
さらに細かい指摘が「梁(はり)」です。「天井高3m」と書いてあっても、途中に大きな梁が通っていれば、ライトを置きたい位置によっては高さを確保できません。施設写真では分かりにくい位置に梁があり、「ライトの高さ調整が大変だった」という実体験も寄せられました。
天井高○mと書くだけではなく、「実際に撮影機材をどこまで自由に配置できるのか」まで分かる情報がある方が、撮影者には親切なのかもしれません。
では、具体的に何mあればいい?
一人を撮影する目安として、「幅3m・引き4.5m・高さ2.4m程度」という意見。より理想的なサイズとして、「幅4.5m・引き6m・高さ3m」という意見。さらに2.7m幅の背景紙や機材スペースまで考えた汎用的なスタジオなら、「幅7m・引き10m・高さ3.6m」くらい欲しい、という意見もありました。
かなり差があります。でも、これはどれかが間違っているという話ではありません。撮影するもの、人数、レンズ、照明、必要な背景によって、必要な寸法が変わるからです。
「人一人を撮るのに100坪あっても無駄になる」という意見もありました。あるカメラマンはこれを「カメラバッグのサイズに似ている」と表現していました。大きければ大きいほど良いのではなく、「撮影内容に対して必要十分なサイズであること。」これが重要なのかもしれません。
狭いスタジオほど「壁」もライティングの一部になる
広さとは少し違う角度から、「内装の色と反射」についての意見もありました。スタジオが狭くなるほど、ライトの光が壁や天井から反射して被写体へ戻ってきます。つまり壁そのものがライティングへ影響します。
そのため、「無彩色で艶のない白や黒が使いやすい」という意見がありました。単に「おしゃれな内装か」だけではなく、「光がどう回る空間なのか」という視点でスタジオを見るカメラマンもいるわけです。

撮影スペース以外の「広さ」も重要だった
「撮影する場所だけ広ければいいわけではない」という意見もありました。実際の撮影現場には、カメラマンとモデルだけでなく、クライアント、代理店、スタイリスト、ヘアメイクなど多くの人が関わる撮影もあります。
重要なのは、クライアントの待機スペース、モデルやヘアメイクの準備スペース、メイクルーム、機材置き場、搬入動線などです。撮影エリアとは別にこうした場所が確保されていると、現場全体がスムーズに進みます。

「撮影を止めない設備」が、実はかなり大事
設備についても多くの具体的な意見がありました。ハンガーラック、撮影物を並べるテーブル、ちょっとした文房具、水場、冷蔵庫、電子レンジ、駐車場、空調、トイレなど。
必要なものがなく、そのたびに買い出しへ行けば撮影が止まります。クライアントにとって撮影は「成果物を作るプロセスの一部」です。搬入から準備、撮影、撤収までスムーズに進むことも「使いやすい撮影スタジオ」の条件なのだと気づかされました。
また、夏や冬には空調がモデルや商品の状態にも影響するという意見や、女性利用者を考えると男女別トイレがあると嬉しいという声もありました。
スタジオの図面に「モデル位置」と「カメラ位置」があったら?
今回、DOLLY側として特に「これは取り入れたい」と思った提案があります。それが、「スタジオの図面に、モデルの立ち位置とカメラ位置を入れる」というアイデアです。
一般的な間取り図には、部屋の縦横や面積は書かれています。でもカメラマンが本当に知りたいのは、「ここにモデルを立たせたら、カメラは何mまで下がれるのか?」なのかもしれません。
さらに、「標準画角で180cmの人物を全身撮影できるか」といった情報まであれば、予約前に撮影をかなり具体的にイメージできます。
前回の自然光がきれいでもストロボを使う理由で取り上げた自然光についても、「自然光がたっぷり入ります」だけではなく、「何月・何時ごろ・どこまで光が入るのか」という情報が欲しいという声がありました。今回も同じです。
「○㎡あります」だけではなく、「実際にどう撮れるのか」を伝える。スタジオ側には、そんな情報提供が求められているのかもしれません。
撮影スタジオの「広さ」は、㎡だけでは分からない
今回カメラマンのみなさんに聞いて分かったのは、「撮影スタジオの使いやすさは、単純な床面積では判断できない」ということでした。
重要なのは、引き、天井高、横幅、空間の形、梁などの障害物、壁の反射、撮影以外のスペース、搬入動線や設備。そして、必要な広さは撮影内容によって変わります。
広ければ広いほど良いわけでもなければ、狭いから撮れないわけでもない。「そこで何を撮るのか」から逆算して、必要な空間を考える。
今回もスタジオを運営しているだけでは気づきにくい視点を、たくさん教えていただきました。回答してくださったカメラマンのみなさん、ありがとうございました。
撮影作例はDOLLY撮影図鑑で、ほかの撮影ノウハウはDOLLY GUIDE一覧からご覧いただけます。



